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      「自然農法に取り組んで」

 昭和44年、高校卒業と同時に就農。私の住む地区は中島町の中心から5〜6km山あいに入った山間地で、かっては農林業が唯一の産業でしたが、現在では人口の減少と共に兼業化も進み、典型的な過疎地となっています。主な農産物は米、小菊カボチャ、白ネギ等が挙げられます。
 
 その様な中で私は数少ない専業農家として就農しました。当初は「米」+「椎茸」の複合経営を行っていましたが、米余りで減反政策が実施されると同時に露地野菜作りに取り組みました。初めは農協の指導で「スイカ」作りに取り組みました。しかし色々と難しい事が多く2〜3年でやめてしまい、その後「キュウリ」、「ナス」作りにチャレンジ゙し、10年近く「米」「キュウリ」「ナス」「椎茸」の複合経営が続きました。
 
 そして昭和61年、ビニールハウスを導入し「半促成キュウリ」「抑制キュウリ」「コマツナ」の栽培に転換しました。現在はハウス栽培が経営の中心となっています。その当時の栽培方法は一般の人と同じで多量の農薬、化学肥料漬け農業でした。そしてその事に何の疑問も持たず、むしろ農薬を駆使した農業が近代農業だと思っていたのです。
 
 その様な中で「沈黙の春」、「複合汚染」等の環境問題を提示する本が数多く出版され、そのような本を読むにつれ、このままでは私の農地、体までもがダメになってしまう・・・・。
と思い始めました。私自身も除草剤を散布すると体調が悪くなる事も度々経験し、なんとか農薬を使うのをやめたいという思いが強くなっていきました。
 
  そして平成元年「MOA」と言うグループ゚の人達との出会いが私の農業を大きく転換させてくれました。その人達は「自然農法」と言う農法、すなはち「土の力」を生かした、自然環境に優しい農業を提唱していたのです。私も少し前からそういった農業に興味を感じていたのですが、取り組むきっかけがありませんでした。
 
 「生きている土」というビデオを見せてもらい非常に感動しました。自然生態系の中での農業。
農薬、化学肥料を全く使わない農法が「自然農法」なのですが、果たしてうまくいくのかどうなのか半信半疑の内に私の「自然農法」がスタ−トしました。平成元年の事でした。
 
 やるからには中途半端ではダメだと思い。今まで使っていた農薬や化学肥料を近所の人にすべてあげて、翌年より全耕地を「自然農法」に切り替えました。その結果は、水稲は3〜4割、キュウリは5割以上の減収を余儀なくされました。
理由はやはり、水稲では雑草、キュウリでは病害虫の被害が大きく、予想通りの結果でした。でも「安全」「安心」と言う事と出来た作物の味の良さの事を考えると、これからも「これしかない!」と思い、ますます頑張ってみようと思いました。

近所の人は、病気や害虫の被害に遭ってひどい状態の胡瓜などを見て、「農薬をこっそり、かけてもわからないから、使えば・・・」と助言してくれたこともありました。

たしかに専業農家の私にとって農産物の減収は生活がかかっているのですから、それこそ大変な状態ではあったのです。先ずは、少しずつでも収量を高める事が必要で、地力をつけることが最も大切な事だと思い「堆肥の施用」「緑肥の栽培」「深耕」・・・・etc、あらゆることを実行しましたが、なかなか成果が現れませんでした。それでも3〜4年後からだんだんと収量も安定し、味もより良くなってきました。
 
そして、以前は穫れた作物は市場出荷でしたが「自然農法」に切り替えたときから、生協やMOAグループ゚、有機農産物取り扱い業者などへ発送しています。値段も以前は他人任せでしたが、現在はこちらの意見も取り入れて貰っています。その結果、収量が少なくても経営的になんとか成り立っていける様になりました。消費者と生産者の顔が見える関係が出来たのも大きな成果のひとつでした。
電話やFAXなどで「おいしかったよ!」「他の野菜も作って欲しい」「頑張ってください」等のメッセージが届きます。その事が何よりの励みになり、農業をやっていて良かったと思うのです。
 
 しかし、問題点もまだまだ多くあります。収量が少ない事もありますが、消費者の方の有機農産物に対する理解が少し足りないと思います。市況が安いとき、どうしても安い一般の野菜に流れていきます。安ければよいという人が多いのが現状です。
 
 作る努力も必要ですが、売る努力がますます必要だと痛感しています。
生産者にも、消費者にも、そして地球にも優しい農業を展開していきたいと考えています。
 これからも、幾多の試練が待ち受けていると思いますが、より安全でおいしい、ほんものの有機農産物つくりをモットーに「楽しい、楽しい農業」をめざして頑張っていきたいと思っています。
 
 
有機野菜を作っているハウス
                                平成8年12月1日(記)   山岸 邦夫

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